娘が2歳になったとき、ふと思った。「この子が社会に出るまで、いったいいくらかかるんだろう」
育児をしていると、日々の出費に追われて全体像が見えにくい。おむつ代、保育料、習い事、学校の費用……個別には把握しているつもりでも、トータルで「いくら必要か」を試算している親は意外と少ない。
コンサルタントとして数字を扱う仕事をしている自分が、娘の将来費用を本気で試算してみた。結論から言うと、0歳から大学卒業までにかかる費用は、進路によって2,000万〜3,500万円以上の差が出る。この記事では、その試算の全容をそのまま公開する。
試算の前提条件
試算にあたって設定した前提を最初に整理しておく。前提が変われば数字も変わるので、自分の家庭に置き換えながら読んでほしい。
- 子ども:現在2歳・女児・一人っ子
- 居住エリア:首都圏(都内近郊)
- 年収:700万円台(共働き世帯)
- 試算期間:現在〜大学卒業(22歳)まで、残り約20年
- 数字の出所:文部科学省・総務省・日本政策金融公庫の公表データをベースに、実体験を加味して補正
フェーズ別に費用を分解する
「子どもにかかる費用」を一括りにしても把握しにくい。コンサル流に、フェーズ別・カテゴリ別に分解して整理する。
フェーズ①:0〜5歳(保育・幼児期)
このフェーズで最も大きいのは保育料だ。ただし、2019年の幼児教育・保育無償化により、3歳以降の認可保育園・幼稚園の保育料は基本的に無償となっている(厚生労働省:幼児教育・保育の無償化)。
- 0〜2歳の保育料:月2〜5万円×36ヶ月=約72〜180万円(収入・園によって差大)
- 3〜5歳の保育料:無償(給食費・雑費として月5,000〜1万円程度は別途)
- 習い事・用品費:月1〜2万円×6年=約72〜144万円
- 医療費:首都圏は中学卒業まで無償の自治体が多い
フェーズ①合計目安:約150〜330万円
フェーズ②:6〜11歳(小学校)
公立小学校の学費自体は無償だが、給食費・教材費・学用品・修学旅行などの付随費用がかかる。文部科学省の調査によると、公立小学校6年間の総費用は約211万円、私立は約1,000万円超とされている。
- 公立の場合:約211万円(給食費・教材費・学外活動含む)
- 私立の場合:約1,000万円超
- 習い事・塾:月2〜5万円×6年=約144〜360万円(学年が上がるにつれ増加傾向)
フェーズ②合計目安:公立+習い事で約350〜570万円
フェーズ③:12〜17歳(中学・高校)
このフェーズから受験・進路選択が絡み、費用の分岐点になる。高校については、2020年から高等学校等就学支援金制度が拡充されており、年収目安910万円未満の世帯は私立高校の授業料が実質無償化されている(文部科学省:高等学校等就学支援金制度)。
- 公立中学:3年間で約160万円(部活・修学旅行・教材含む)
- 私立中学:3年間で約420万円
- 公立高校:3年間で約150万円
- 私立高校:3年間で約320万円(就学支援金適用後)
- 受験費用・塾代:中学受験する場合は小4〜小6で100〜200万円追加
- 高校受験塾:中3で30〜60万円
- 大学受験塾:高2〜高3で60〜150万円
フェーズ③合計目安:公立中高ルートで約400〜560万円、中学受験ルートで約700〜1,000万円
フェーズ④:18〜21歳(大学)
費用の最大の分岐点は大学だ。国公立か私立か、理系か文系か、自宅通学か一人暮らしかで総額が大きく変わる。
- 国公立大学(自宅通学):4年間で約250万円(授業料・入学金)
- 私立文系(自宅通学):4年間で約400万円
- 私立理系(自宅通学):4年間で約550万円
- 私立(一人暮らし):上記+生活費月10〜15万円×48ヶ月=480〜720万円追加
フェーズ④合計目安:国公立自宅で約250万円〜私立理系一人暮らしで約1,270万円
進路パターン別・総額シミュレーション
フェーズ別の数字を組み合わせて、代表的な4パターンで総額を試算した。
パターンA:オール公立+国公立大(最小コストルート)
- 保育期:約200万円
- 小学校:約400万円(公立+習い事)
- 中高:約450万円(公立)
- 大学:約250万円(国公立・自宅)
- 合計:約1,300万円
パターンB:公立小→中学受験→私立中高→私立文系大(首都圏の現実的なルート)
- 保育期:約200万円
- 小学校:約600万円(公立+中学受験塾)
- 中高:約850万円(私立一貫)
- 大学:約400万円(私立文系・自宅)
- 合計:約2,050万円
パターンC:公立一貫→私立理系大・一人暮らし
- 保育期:約200万円
- 小学校:約450万円
- 中高:約500万円(公立)
- 大学:約1,100万円(私立理系・一人暮らし)
- 合計:約2,250万円
パターンD:中学受験→私立一貫→私立理系大・一人暮らし(最大コストルート)
- 保育期:約200万円
- 小学校:約700万円(中学受験塾含む)
- 中高:約900万円(私立一貫)
- 大学:約1,100万円(私立理系・一人暮らし)
- 合計:約2,900万円
試算して気づいたこと
数字を並べて改めて気づいたことが3つある。
①「大学費用」より「小中高の積み上げ」の方が総額への影響が大きい。大学の費用は4年間で完結するが、小中高は9〜12年間続く。習い事・塾・部活動の費用は長期にわたって積み上がるため、ここをどう設計するかが総額を大きく左右する。
②進路は「子どもが選ぶもの」だが、親の財務設計が選択肢を決める。子どもが「医学部に行きたい」と言ったとき、資金が準備できていなければ選択肢を狭めてしまう。どのパターンになっても対応できる準備をしておくことが親の役割だと思っている。
③学資保険では到底足りない。よくある学資保険の積立額は200〜300万円だ。上記のどのパターンを見ても、教育費の一部にしかならない。我が家が学資保険ではなく投資で教育費を賄う設計にしている理由はここにある。
我が家の教育費準備の設計
試算結果を踏まえて、我が家はパターンB(約2,050万円)を現実的な想定として設計している。
準備方針はシンプルだ。NISAの成長投資枠・積立投資枠を活用しながら、不動産と株式の資産全体で教育費を賄う設計にしている。特定の口座に「教育費専用」として積み立てるのではなく、資産全体の中で教育費を賄えるポートフォリオを維持するイメージだ。
子どもが18歳になるまでに残り16年ある。長期投資の時間軸として十分だ。
詳しい設計思想は教育費は学資保険より投資で賄う設計にまとめているので、あわせて読んでほしい。
まとめ:教育費は「総額を知る」ことから始まる
2歳の娘にかかる将来費用を試算した結果をまとめる。
- オール公立+国公立大:約1,300万円
- 中学受験→私立→私立文系大:約2,050万円
- 公立→私立理系大・一人暮らし:約2,250万円
- 中学受験→私立→私立理系大・一人暮らし:約2,900万円
進路が決まるのは先のことだが、準備は今から始めるしかない。「どのパターンになっても対応できる資産を作る」というのが、コンサルパパとしての結論だ。
総額を知ることで、日々の家計判断も変わる。「今月の習い事を増やすか」「NISAの積立額を上げるか」という選択も、全体像が見えていると判断がしやすくなる。まず試算してみることをおすすめしたい。
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