「共働きなのに、独身のときより保険料が増えた」「子どもが生まれてから、保険を追加するよう勧められた」——共働き夫婦が子育て期に入ると、保険の営業に接触する機会が急増します。
しかし実は、共働き夫婦は専業主婦(主夫)世帯と比べて、生命保険の必要保障額が少なくて済むケースが多いです。片方が亡くなっても、もう片方の収入が残るからです。
私は33歳、1歳の娘を持つ共働き世帯です。コンサルティング会社勤務(年収700万円台)で、妻も働いています。この記事では、共働きだからこそ保険が少なくて済む理由を、計算式を使って具体的に解説します。
このページの目次
共働きで保険が少なくて済む3つの理由
理由① 片方が亡くなっても収入が残る
生命保険の必要保障額は「遺族の支出総額 − 遺族の収入総額」で計算されます。専業主婦(主夫)世帯では、稼ぎ手が亡くなると収入がゼロになるため、必要保障額が大きくなります。
一方、共働き世帯では片方が亡くなっても、もう片方の収入が残ります。これだけで遺族の収入計算が大きく変わり、必要保障額が圧縮されます。
理由② 遺族年金が手厚くなる
共働きで両方が厚生年金に加入している場合、万一のときに受け取れる遺族厚生年金の水準が高くなります。国民年金のみの自営業世帯より、会社員共働き世帯の方が公的保障が手厚いため、民間保険で補う必要額が少なくなります。
遺族年金の詳細は日本年金機構の公式ページで確認できます。
→ 遺族年金|日本年金機構
理由③ 傷病手当金・育休給付金などの公的保障が両方に適用される
会社員として健康保険に加入していれば、病気やケガで働けなくなった場合の傷病手当金(最長1年6ヶ月・給与の3分の2)が夫婦それぞれに適用されます。どちらかが就業不能になっても、もう片方の収入+傷病手当金で一定期間は生活が維持できる構造です。
傷病手当金の詳細は全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式ページで確認できます。
→ 傷病手当金について|全国健康保険協会(協会けんぽ)
また、育児休業中の収入補填として雇用保険から支給される育児休業給付金(休業前賃金の最大80%)も、共働き世帯では夫婦ともに利用できます。
→ 育児休業給付について|厚生労働省
共働き夫婦の必要保障額を計算する
必要保障額の計算式は以下の通りです。
必要保障額 = 遺族の支出総額(A) − 遺族の収入・保障合計(B)
共働き世帯では(B)の収入・保障合計が大きくなるため、結果として必要保障額が小さくなります。具体的に計算してみましょう。
ケース:夫が亡くなった場合の試算
| 支出項目(A) | 金額 | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 遺族の生活費 | 約2,800万円 | 月20万円×12×娘が22歳まで約12年+その後老後分 |
| 教育費 | 約500万円 | 公立ルート+大学費用 |
| 葬儀・整理費用 | 約200万円 | 標準的な費用 |
| 支出合計(A) | 約3,500万円 |
| 収入・保障項目(B) | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 妻の収入 | 約2,400万円 | 月20万円手取り×12×約10年(子が独立まで概算) |
| 遺族年金(基礎+厚生) | 約1,200万円 | 約100万円/年×12年(概算) |
| 団信(不動産2物件) | 約3,700万円 | ローン完済で物件が家族に残る |
| 会社の団体保険 | 約500万円 | 勤務先の団体生命保険 |
| 現在の金融資産 | 約1,267万円 | 現金480万円+株式787万円 |
| 収入・保障合計(B) | 約9,067万円 |
必要保障額 = 3,500万円(A) − 9,067万円(B) = △5,567万円
計算結果は大幅なマイナスです。つまり私の世帯では、夫(私)が亡くなっても、個人の生命保険がなくても遺族の生活は成立する計算になります。
この結果の主な理由は3つです。妻の収入が残ること、不動産2物件の団信(約3,700万円)が機能すること、そして金融資産が一定額あることです。
ケース:妻が亡くなった場合の試算
共働き世帯では、妻側の保障も同様に計算が必要です。妻が亡くなった場合、夫(私)の収入は残りますが、子育て・家事の負担が増加し、保育・家事代行などの費用が発生する可能性があります。
この追加コストを月5〜10万円と見積もると、年間60〜120万円・子が独立するまでの期間を考えると数百万円規模になります。妻の生命保険はこの「追加コストのカバー」として位置づけると、必要保障額を適切に設計できます。
共働き世帯が陥りやすい「過剰加入パターン」
パターン① 専業主婦世帯と同じ基準で保障を設計している
保険の担当者が「一般的な子育て世帯の必要保障額」として提示する金額は、専業主婦世帯を想定しているケースが多いです。共働き世帯にそのまま当てはめると、必要以上の保障を買うことになります。
保険相談の際は、必ず「共働きで妻(夫)の収入がある前提」を伝えた上で必要保障額を算出してもらうことが重要です。
パターン② 団信の保障を計算に入れていない
住宅ローン・不動産投資ローンを持っている共働き世帯は、団信の保障額を必ず計算に入れてください。私のケースでは団信だけで約3,700万円の保障があります。これを無視して生命保険を設計すると、大幅な過剰加入になります。
パターン③ 収入保障保険と死亡保険を混同している
共働き世帯で本当に必要なのは、「死亡時の一時金」より「就業不能時の収入補填」である場合が多いです。死亡保険より収入保障保険(就業不能時に月々の収入を補填する保険)の方が、共働き世帯のニーズに合っているケースがあります。
共働き世帯の保険設計:実践的な3ステップ
ステップ① 夫婦それぞれの必要保障額を計算する
夫が亡くなった場合・妻が亡くなった場合のそれぞれで、必要保障額の計算式を使って試算します。共働きの場合、どちらが亡くなっても「もう片方の収入+公的保障+既存資産」で遺族の生活が成立するかを確認します。
ステップ② 会社の団体保険・団信・公的保障を洗い出す
個人保険を検討する前に、以下を整理します。
- 夫婦それぞれの会社の団体保険の保障額
- 住宅ローン・不動産ローンの団信保障額
- 遺族年金(基礎+厚生)の目安額(ねんきん定期便で確認)
→ 遺族年金|日本年金機構 - 傷病手当金(就業不能時の収入補填)
→ 傷病手当金について|全国健康保険協会
ステップ③ ギャップ分だけを個人保険で補完する
ステップ①②で計算したギャップが残る場合のみ、個人保険で補完します。共働き世帯の場合、このギャップが小さい(またはマイナス)ケースが多いため、個人保険はごく少額で済むことが多いです。
浮いた保険料を積立投資に回すことで、長期的な資産形成が加速します。
まとめ:共働きは「保険より資産形成」にシフトできる
共働き世帯が生命保険を少なくできる理由をまとめます。
- 片方が亡くなっても収入が残る:遺族の収入源が確保されている
- 遺族年金が手厚い:両方が厚生年金加入のため公的保障が大きい
- 傷病手当金が両方に適用される:就業不能リスクへの公的備えがある
- 団信が大きな保障として機能する:ローン保有世帯は特に有効
「共働きだから保険を手厚くしなければ」という思い込みは、必ずしも正しくありません。必要保障額を自分で計算した上で、本当に不足している部分だけを個人保険で補う——この考え方が、共働き世帯の最適な保険設計です。
保険料を適正化して浮いた資金を家族の資産形成に回すことが、長期的な家族資産設計の観点からも合理的な選択です。
【著者プロフィール】
33歳・1歳娘の子育て世帯。コンサルティング会社勤務(年収700万円台)。不動産2物件・株式・副業を並行しながら、50歳までの純資産1.5億円を目指して資産設計中。このブログでは、実体験にもとづいた家族資産設計の考え方を発信しています。