「退職金があるから老後は安心」
こう思えるのは、新卒から定年まで同じ会社で働き続けられた場合の話です。転職経験がある人・退職金制度がない会社に勤めている人にとって、退職金は「あてにできないもの」です。
私の現職には退職金制度がありません。その代わりに企業型DCがあります。さらに個人でiDeCo・NISA・不動産投資を組み合わせて、「自分で作る退職金」を設計しています。
この記事では、退職金がない・または退職金をあてにできない会社員が、どう老後資金を設計すべきかを実体験から解説します。
退職金の現実:もらえる人は思ったより少ない
まず退職金の現実を把握しておきます。
厚生労働省の調査によると、退職金制度がある企業の割合は大企業で約80%、中小企業では約70%です。ただしこれは制度がある企業の割合であり、実際に退職金を受け取れる金額は勤続年数・退職理由(自己都合か会社都合か)によって大きく変わります。
大卒・定年まで勤続した場合の平均退職金は約2,139万円というデータがありますが、これはあくまで新卒から定年まで同じ会社で働き続けた場合の数字です。転職経験者はこの金額より大幅に少なくなります。
私のように退職金制度がない会社に勤めている場合は、退職時に受け取れる一時金はゼロです。
退職金がない場合のリスクと対策の考え方
退職金がない・少ない場合のリスクはシンプルです。老後資金が足りなくなる可能性が高まります。
でも逆に言えば、「退職金がないとわかっている」ことは、早めに対策を取れるというアドバンテージでもあります。退職金があると思って準備を怠り、定年後に気づくよりずっとマシです。
対策の基本的な考え方は「退職金の代わりを自分で作る」ことです。
「自分で作る退職金」の3本柱
柱①:企業型DC(勤務先が用意してくれる積立)
企業型DC(確定拠出年金)は、会社が掛け金を拠出し、従業員が運用する制度です。退職金制度の代わりとして導入している企業が増えています。
企業型DCのメリットは以下の通りです。
- 会社が掛け金を出してくれる:自分の給与から引かれるわけではないため、実質的に会社からの上乗せになります
- 運用益が非課税:NISA同様、運用中の利益に税金がかかりません
- 受取時の税制優遇:一時金で受け取ると退職所得控除が適用されます
重要なのは「どの商品で運用するか」を自分で決めることです。デフォルトの元本保証商品(定期預金等)のままにしている人が多いですが、長期運用であればインデックスファンドで運用する方が資産が増える可能性が高いです。
柱②:iDeCo(自分で掛け金を出す積立)
企業型DCがある場合でも、条件によってiDeCoを併用できます。私は2社目でiDeCoを月5,000円で開始し、3社目(現職)に転職してから月2.5万円に増額しました。
iDeCoの最大のメリットは掛け金が全額所得控除になることです。年収700万円台で月2.5万円拠出すると、年間約7万円の節税効果があります。企業型DCは会社が掛け金を出しますが、iDeCoは自分で掛け金を出すことで節税効果を得られます。
企業型DCとiDeCoの使い分けについてはiDeCo vs 企業型DC 徹底比較で詳しく解説しています。
柱③:NISA・不動産投資(自由に引き出せる資産)
企業型DCとiDeCoは60歳まで引き出せません。これが最大の制約です。そのため、60歳より前に必要になる資金(教育費・住宅費・緊急予備資金)はNISAや不動産投資で準備します。
私の場合、NISAで月10万円・個別株で月5万円を運用しています。不動産投資では2件の区分マンションから月CF約1.2万円のキャッシュフローを得ています。
60歳以降の生活費は企業型DC+iDeCo+NISAの取り崩し+不動産家賃収入+年金の組み合わせで賄う設計にしています。
退職金なし・企業型DCありの場合の具体的な設計
私の現在の資産形成設計をそのまま公開します。
| 制度・手段 | 月額 | 誰が拠出 | 引き出し可能時期 |
|---|---|---|---|
| 企業型DC | 会社拠出分 | 会社 | 60歳以降 |
| iDeCo | 2.5万円 | 自分 | 60歳以降 |
| NISA(全世界株) | 10万円 | 自分 | いつでも可 |
| 個別株 | 5万円 | 自分 | いつでも可 |
| 不動産CF | +1.2万円 | — | 毎月入金 |
退職金がない分を、iDeCo・企業型DC・NISA・不動産で補完する設計にしています。60歳以降に引き出せる資産(企業型DC+iDeCo)と、それより前にも使える資産(NISA・不動産)を分けて持つことで、ライフイベントに柔軟に対応できます。
退職金をあてにしている人が陥りやすい罠
退職金があっても、以下の点に注意が必要です。
- 転職すると退職金が大幅に減る:自己都合退職は会社都合退職より退職金が少なくなるケースが多いです。また勤続年数が短いと支給額が著しく低くなります
- 退職金だけでは老後資金が不足する:定年まで勤めた場合の平均約2,139万円でも、老後30〜35年間の生活費を賄うには不足する場合があります
- 退職金の受取方法で税負担が変わる:一時金か年金形式かで税負担が大きく変わります。退職所得控除を最大限活用するには事前の設計が必要です
30代のうちにやっておくべきこと
退職金がある・なしに関わらず、30代のうちにやっておくべきことは共通しています。
- 企業型DCの運用商品を確認する:デフォルトの元本保証商品のままになっていないか確認し、インデックスファンドへの変更を検討する
- iDeCoを開始または増額する:企業型DCとの併用条件を確認した上で、節税効果を最大化する
- NISAで長期積立を始める:60歳より前にも使える資産として、NISAでの積立を並行して進める
- 退職金の有無・金額を把握する:会社の就業規則・退職金規程を確認して、実際に受け取れる金額の目安を把握する
まとめ:退職金がなくても老後資金は作れる
- 退職金は「もらえるとは限らない」:転職経験者・退職金制度がない会社員はゼロまたは少額になる
- 「自分で作る退職金」の3本柱:企業型DC(会社が出す)・iDeCo(自分で出す・節税あり)・NISA(自由に使える)
- 企業型DCの運用商品を見直す:デフォルトの元本保証商品のままにしない
- 60歳前後で使える資産を分けて持つ:企業型DC+iDeCoは60歳以降・NISAは柔軟に使える設計にする
- 30代のうちに把握・設計する:早く始めるほど複利効果が大きくなる
退職金がないことを不安に思う必要はありません。「ないとわかっている」なら、今すぐ代替を設計できます。退職金がある人より早く動けることが、むしろアドバンテージです。
※本記事の内容は個人の実体験・考え方に基づくものです。将来の運用成果を保証するものではありません。投資にはリスクが伴います。制度の詳細は厚生労働省およびiDeCo公式サイトをご確認ください。情報は変更される場合があります。
よくある質問
Q. 退職金がない会社でも老後の資金は準備できますか?
準備できます。企業型DC・iDeCo・NISAの組み合わせで、退職金の代わりになる老後資金を自分で作ることができます。むしろ退職金がないとわかっていることで、早く対策を取れるアドバンテージがあります。
Q. 企業型DCとiDeCoは両方使えますか?
勤務先の企業型DCの規約によって異なります。企業型DCに「マッチング拠出」がある場合と「iDeCo併用可能」の場合で条件が変わります。まず勤務先の人事・総務に確認することをすすめます。詳細はiDeCo公式サイトをご確認ください。
Q. 企業型DCの運用商品はどう選べばいいですか?
長期運用(20年以上)が前提であれば、全世界株または国内外のインデックスファンドを選ぶことをすすめます。元本保証商品(定期預金等)はリスクはゼロですが、インフレに負けて実質的な資産価値が目減りするリスクがあります。運用商品の変更は企業型DCの管理サイトから手続きできます。
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